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【永久保存版】ランチェスター戦略の教科書 -実践編-

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理論編の記事では、
ランチェスター戦略とは一体何なのか?

その全体像と戦略論について詳しく解説しました。

この記事では、理論編の前提理解を元に、
ランチェスター戦略の実務体系にスポットをあて
実際の実務にどのように活用していけばよいのか?を
ひとつずつ解説していきます。

まだ理論編をご覧になっていない方は、
こちらからご覧ください。
【永久保存版】ランチェスター戦略の教科書 -理論編-

ランチェスター戦略の実務体系とは?

ランチェスター戦略には、
どのようにすれば勝ち抜けるのか?という理論と
実際の現場でどう使うのか?という実務体系があるため

多くの企業で採用され、
多大なる成果をもたらすことに成功しています。

ではその実務体系には一体どのようなものがあるのか?

それは、

ランチェスター戦略の実務体系

  • ・市場参入戦略
  • ・地域戦略
  • ・シェアアップ戦略
  • ・営業戦略

上記の4つがあります。

それではひとつずつ解説していきますね。

ランチェスター戦略【実務体系】市場参入戦略

ランチェスター戦略の実務体系の最初は
この『市場参入戦略』です。

市場参入戦略では、

・市場参入の全体像とフレームワーク
・市場時期に応じた具体的な手順
・市場参入の事例

上記を解説していきます。

この実務体系をマスターすることで
新規事業を立ち上げ市場参入する際、

一体どのような戦い方をすれば良いのか?
その体系がわかるようになるでしょう。

では、まず「市場参入における基本方針」から
見ていきましょう。

市場参入における全体像とフレームワーク

大手企業では、多額の予算を投じてリサーチを実施した上で
新プロダクトを開発、そしてリリースして
「成功する商品」を生み出している訳ですが
それでも失敗する例は多々あります。

零細企業で
「新たな製品をつくったまでは良いが、
 全く売れなかった」

こうした失敗が繰り返されれば
あっという間に倒産ですよね。

ランチェスター戦略では、
シェアアップの実務の前に

市場参入する“時間軸”に応じて

・どのような戦略方針で参入すべきか?
・誰に?(顧客層は?)
・何を?(価値・価格は?)
・どのように?(販売方法は?)
・次のフェーズ転換の判断基準

上記を整理した『グー・パー・チョキ理論』という
市場参入で成功させる上での実務体系があります。

では、この『グー・パー・チョキ理論』を解説する前に
前提となるいくつかの理論とフレームワークをお話します。

プロダクト・ライフサイクル(PLC)曲線

マーケティングの書籍などで
ご覧になったことのある方もいらっしゃると思いますが、

Product life cycle
上記が、プロダクト・ライフサイクル曲線です。

この考え方の根幹は、
『製品には寿命がある』というところにあります。

その中で、
・製品の販売時期による「機会」「試練」「問題」
・製品の販売時期による「利益変化」
・製品の販売時期による「ビジネスの変化(マーケティング、財務、製造、人など)」

上記を踏まえ、
「どのような戦略を用いていくのか?」
ということを考えるツールです。

横軸が『時間経過』で
縦軸が『売上規模』です。

横軸:時間経過について

プロダクト・ライフサイクル曲線の
横軸『時間経過』には、

導入期、成長期、成熟期、減衰期
という流れで時期別にセグメントされており、
ランチェスター戦略ではこの時期別の考え方を
市場参入戦略としてまとめています。
※時期には導入期前の「開発期」
飽和期と減衰期の間にある「飽和期」を含めたパターンもある

以下は時期別の概要です。

導入期:
製品が市場参入された時点から、少しずつ販売数が伸びていく期間。
※市場への導入、認知獲得のために多額の費用が発生。利益が出ないことも多い。

成長期:
市場で参入製品が認知され、一定数に受け入れられる。
※大幅に利益が得られる期間。

成熟期:
市場の潜在顧客の多くに行き渡り、販売量が成長期に比べ鈍化する期間。
この成熟期の長短がプロダクトの寿命の長さを決める大きな要因となる
※前半は安定的な利益を得られる。
後期になると競争激化を伴い減少しはじめる時期。

減衰期:
製品の売上が減少。利益も追随する形で減少していく時期。

縦軸:売上規模について

縦軸『時間経過』には、
要所となるポイントに名称が付けられており

それぞれ
・Deci Peak(境界点)
・Plateau(停滞期)
・Turning point(転換点)
・Peak(飽和点)

という4つがあります。

それぞれの意味は以下のとおりです。

・Deci Peak(境界点)
Deci Peak(デシピーク)は、
導入期と成長期の転換点を指し、

ピークの10分の1を意味します。
しかし、それは後付けでしかわからないため

実務的には
「販売数が一気に増えはじめたポイント」
このタイミングが『Deci Peak(境界点)』で
成長期に入ったという合図で考えます。

・Plateau(停滞期)
直訳すると「高原」という意味ですが、
ここでの意味合いとしては、
『成長期の中で販売が伸び悩む時期』を指します。

成長期に入ったものの、一時的に売上規模が
横ばいになる時期で、この踊り場を超えると
更に一段階上へ売上規模が成長します。

・Turning point(転換点)
成長期に伸ばしてきた販売数量が鈍化する、
つまり、伸びしろが縮まったタイミングを
『Turning point(転換点)』とします。

数字だけ見ると見落としやすいポイントですが
ここが戦略転換のポイントでもあるため大切な指標です。

・Peak(飽和点)
販売数量が最高点に到達したポイントを指します。
これまで数量増加していた販売数が、この『Peak(飽和点)』以降
減少していくことになります。

イノベーター理論

次は『イノベーター理論』です。

・イノベーター(Innovators 革新者)
・アーリーアダプター(Early Adopters 初期採用者)
・アーリーマジョリティ(Early Majority 前期追随者)
・レイトマジョリティ(Late Majority 後期追随者)
・ラガード(Laggards 遅滞者)

これは消費者を5つの階層に分けて考える理論で
アメリカのコミュニケーション学者、社会学者である
エベレット・ロジャーズ(Everett M. Rogers)氏が提唱した理論です。

意味はそれぞれ以下のとおりです。

・イノベーター(革新者)
冒険心に溢れ、新商品・新サービスを進んで採用する人
※市場全体の2.5%

・アーリーアダプター(初期採用者)
流行に敏感で、情報収集を自ら行い判断し、
新商品・新サービスを早い段階で採用する人。

消費者への影響力が大きく
「オピニオンリーダー」とも呼ばれる層
※市場全体の13.5%

・アーリーマジョリティ(前期追随者)
慎重思考。
平均よりも早く新商品・新サービスを取り入れる人。
「ブリッジピープル」とも呼ばれる。
※市場全体の34.0%

・レイトマジョリティ(後期追随者)
懐疑的思考。大多数が採用していることを確認してから
同じ選択をする人。「フォロワーズ」とも呼ばれる。
※市場全体の34.0%

・ラガード(遅滞者)
5階層の中で最も保守的。
流行や世の中の動きに関心が薄く、新商品・新サービスが
世の中の一般常識になるまで採用しない。又、永遠に購入しない階層。
「伝統主義者」とも呼ばれる。
※市場全体の16.0%

普及率16%の理論

製品が持つライフサイクルと
顧客のタイプ分けをしたイノベーター理論
この2つを重ねてみるとこんな↓風に考えることができます。

革新者である『イノベーター』層は、
新しいものに率先して採用し、追随する形で
『アーリーアダプター』である初期採用者層が
新しい商品・サービスを採用していきます。

しかし、問題は
『アーリーアダプター』は、
『イノベーター』に比べ、情報収集をおこない
ある程度、合理的な判断をするため、

『アーリーアダプター』層の13.5%を取り込めないと
『イノベーター』層の2.5%で販売数が伸びず
プロダクト・ライフサイクル曲線の『成長期』を迎えることなく
その寿命を終えてしまうことになります。

・イノベーター:2.5%
・アーリーアダプター:13.5%
合計:16%

このイノベーターと
アーリーアダプターを合わせた16%が、

最も比率の高い
『アーリーマジョリティ:34%』へ普及する
重要なポイントであるとエベレット・ロジャーズ氏は唱え
その理論を『普及率16%の理論』と呼びます。

キャズム理論

『普及率16%の理論』に対し、
同じくアメリカのマーケティング・コンサルタントである
ジェフリー・A・ムーア(Geoffrey A. Moore)氏は、

“利用者の行動様式に変化を強いるハイテク製品においては、
個々のタイプの間にはクラック(断絶)がある”と説き、

市場を、

・初期市場
=イノベーターとアーリーアダプターで構成される市場

・メインストリーム市場
=アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードの市場

上記のように区分しました。

また、
『アーリーアダプター:13.5%』と、
『アーリーマジョリティ:34%』の間には深い溝が存在するとして
その溝のことをを“キャズム”と名付けます。

更に同氏は、
イノベーターやアーリーアダプターが
『新しい商品・サービスを採用する』のに対し

アーリーマジョリティが
『安定・安心を重視する傾向がある』ため

その要求は『180度、異なっている』

つまり、
メインストリーム市場へ移行できるかを左右する
アーリーマジョリティ:34%への普及段階においては、

マーケティングアプローチを
それまでと『変える必要がある』

このように論じました。

この理論を『キャズム理論』と言い、
ランチェスター戦略の市場参入戦略では
ひとつの理論として参考にしています。

価格設定

価格設定
前提となる基礎知識として最後にご紹介するのが
価格設定の考え方である、

・スキミング・プライシング
・ペネトレーション・プライシング

上記の価格戦略です。

この2つの価格戦略は
代表的な価格付けの考え方ですので
押さえておくとことで根拠ある価格設定が
できるようになります。

では、スキミング・プライシングから
お話していきます。

スキミング・プライシング

名称にある「スキミング」の意味は、
「すくいとる」や「盗み取る」という意味がありますが
ここでは「上澄み」というイメージです。

実際の意味は、
販売商品の価格を『高価格帯』に設定する考え方で、
イノベーター(新しいもの好き)や富裕層(高所得層)といった、
顧客の中でも上層に位置する顧客をターゲットにする手法です。

商品・サービスに「希少性」や「限定性」
「新しさ」や「投資効果」などの付加価値を盛り込み、
一般的には手を出しづらいような専門性を付与した
上澄みに支持されるような価格設定です。

高級ブランドでは良くこのスキミング・プライシングを用いた
価格設定が行われています。

メリット:
初期投資の早期回収が望めるため
キャッシュフローが安定しやすい

デメリット:
高価格設定が普及スピードを阻害するため
規模の経済を発揮することが難しい

ペネトレーション・プライシング

「ペネトレーション」とは、
「浸透」や「侵入」という意味ですが、
ここでは「浸透」させるというイメージです。

具体的には
販売商品の価格を『低価格帯』に設定する考え方で、
より広い顧客層へ普及を促進し高い市場シェアを確保するという
考え方です。

特に価格の高低に反応しやすい商品、
たとえば、日用品やコモディティ商品といった
差別化要素の低いもの、

価格弾力性が高く、値段が下がることで
販売数量が伸びやすい商品がこの価格戦略に向いています。

この応用として「フリーミアム」という
ビジネスモデルの種類があり、

スマホゲームや新規ソフトウェアなどは
基本機能を無料提供することで普及を図り、

追加機能や付加サービスに料金課金することで、
利益を上げるというペネトレーション・プライシングを
応用したような価格戦略がとられています。

メリット:
薄利多売によるスケールメリットを活かすことで
普及スピードを早め市場認知、市場シェアを確保しやすい

デメリット:
商品・サービスを量産できない場合、
スケールメリットは活かせない。

また、市場シェアを一定以上確保できなかった場合
投資回収ができないリスクがあり
キャッシュフローが悪くなりやすい

以上が、

・スキミング・プライシング
・ペネトレーション・プライシング

価格戦略の考え方でした。

市場時期に応じた具体的な手順

では、いよいよランチェスター戦略における
市場参入戦略の具体的な手順について

一体どうすれば良いのか?
その手順を公開します。

グー・パー・チョキ理論

プロダクト・ライフサイクル曲線や
イノベーター理論で述べたように、

市場状況は、その参入のタイミングで
全く異なってきます。

では、自社が新商品・サービスをつくり
いざ市場に参入するという際に

・どのような戦略方針で参入すべきか?
・誰に?(顧客層は?)
・何を?(価値・価格は?)
・どのように?(販売方法は?)
・次のフェーズ転換の判断基準

上記が整理されていなければ、
非常に行き当たりばったりの参入になってしまいます。

ランチェスター戦略では、
『グー・パー・チョキ理論』という
市場参入タイミングに応じた『考え方』と、
『手順』がありますので

参入する際にどのように考えれば良いのか?を
これから順番にお話していきます。

導入期は『グーの戦略』

グーの戦略
手のひらをギュッと握った
『グー』の形のように

固く鋭く突き上げるかのように
市場参入する方法がグーの戦略です。

言い換えるならば、
ランチェスターの弱者の戦略にあった
『差別化』であり、『一点集中主義』です。

身近なコンビニでも
グーの戦略は転がっています。

たとえば、お茶。

ウーロン茶、緑茶、麦茶、ジャスミン茶、ほうじ茶、などなど
お茶と言ってもたくさん種類があって、
更に、それぞれの種類で別々のブランドが入り混じっていますよね。

そんな中で、新たな市場をつくり出し
グーの戦略で一気にブレイクした商品があります。

それは、花王の「ヘルシア緑茶」です。

他の緑茶は500mlで150円程度でしたが、
ヘルシア緑茶は350mlで180円という価格設定。

普通に考えれば売れるはずがない。と思うような
この価格設定ですが、

ターゲットを「メタボの中年男性」に絞り込み
他の緑茶やお茶では解決できない
「体脂肪を抑制し健康的なスリム身体」をサポートするという訴求で
一気に新たな市場を開拓しました。

お茶は大人から子供まで、
男女問わず飲まれる飲料ですが、

ヘルシア緑茶は、特定ターゲットのみの
潜在ニーズに着目し、
新たな市場の導入戦略として
グーの戦略で大きなシェアを獲得しました。

まとめると、
新たな市場に参入する際、
つまり、導入期の市場参入においては、

鋭く狭く濃い、握りこぶしの『グー』のように
ターゲットや訴求を絞り込み、
一点集中で一気に攻め込むのが『グーの戦略』です。

成長期は『パーの戦略』

パーの戦略
手のひらの握りこぶしをパーっと開き
市場を網羅するかのごとく広げ
対象マーケットを掌握するのが『パーの戦略』です。

成長期は、需要が掛け算的に拡大する時期、
後発企業もこぞって参入してくることからも
経営資源、そしてスピードが決め手になるタイミングです。

言い換えるならば、この時期は、
強者の戦略である『ミート戦略』です。

たとえば、
導入期に絞り込んだ商品ラインナップを
徐々に広げてバリエーションを揃えます。
販売地域、販売経路、価格帯、などです。

なぜなら、この成長期の伸びしろは、
顧客ニーズの多様化の促進と、その供給バランスが
大事になってくるからです。

成長期には『プラトー』という
成長が一気に伸びるかどうか?の『踊り場』が存在し、
ここを超えることが成長が一気に加速します。

この顧客ニーズに応えられるように、
また、顧客ニーズを引き出すための
大衆向け、多様化対策が成長期にやるべき戦略で、

まとめると、
販売地域、販売経路、価格帯などニーズの受け皿を、

手のひらの『パー』のように広げて
網羅する考え方が『パーの戦略』です。

衰退期は『チョキの戦略』

チョキの戦略
手のひらを広げた状態から、
ジャンケンの『チョキ』で
『パーの戦略』で広げていた地域や販路、製品ラインを
チョキチョキカットしていきます。

ポイントは衰退期に入る前から進めていくことです。

市場のライフサイクルは成長期の後、
突然衰退するのではなく、成熟期を迎え
そして衰退期に入っていくのですが、

成熟期は、パーの戦略のままでも
利益は上がるので、ますます拡大してしまって
後で取り返しのつかないことがよく起こってしまうからです。

一昔前、SEO会社は絶頂を迎えていましたが、
Googleのアップデートによって一網打尽になりました。

被害が大きかったところの共通点は、
市場のライフサイクルを考えない
拡大戦略(パーの戦略)を継続したため

衰退期に入ってからの売上鈍化に
企業の最適化が追いつかず
キャッシュアウトしてしまったのです。

では、成長期は最大限収益を上げつつ
この衰退期をあらかじめ予測して
事業を最適化するためには、
一体どのような視点で考えれば良いのでしょうか?

それは、
利益額と販売数量を観測する。ことです。

実は、利益ピークは販売数量のピークよりも早く訪れるため
この2つを計測していればあらかじめ予測できるのです。

これはどういう事かと言うと、
成長期はバカスカ売れていきますが、
後発参入が出揃い、顧客ニーズを満たし始める
成熟期に入ると、利益を削って販売数を増やす活動へシフトします。

そうなると、
利益額は徐々に落ちて、
販売数量は安売りで増加するという
数字の変化を示すため、

利益額と販売数量の2点を計測していれば
成長期から成熟期への移行をおおよそ判断できるようになり

来るべき衰退期に向けて
徐々に事業縮小を進めて収益性を高めるという
戦略が実施できるというわけです。

まとめると、
利益額と販売数量を計測し、
販売数量が鈍化し、利益額の更新が
難しくなり始めたら

不採算部門から順にカットしていく
事業厳選の考え方が『チョキの戦略』です。

【市場参入の事例】レッドブルの市場参入

レッドブルの市場参入は、
正にランチェスター戦略における
『グーの戦略』と『パーの戦略』が該当します。

グーの戦略では、
2005年にレッドブルは日本市場に参入しましたが
当時、栄養ドリンクという市場はありましたが
エナジードリンクという市場はなく、新規参入の市場でした。

レッドブルの驚くべきグーの戦略とは、
コンビニやスーパーで販売しないという選択です。

実は、参入当初レッドブルは
クラブやバーでカクテルの割り物として
参入しています。これは販売経路の絞り込みです。

また、マーケティングの一環として、
レッドブルは「スポーツマーケティング」を採用し、

エクストリームスポーツと呼ばれる
速さや高さなど、危険でエキサイティングな
過激なスポーツのスポンサーとなり、
レッドブルのイメージとシンクロさせることに
成功しています。

ここでのポイントは、
大衆が知っているようなスポーツや
選手のスポンサーではないということです。

野球のイチローやサッカーの本田圭佑といった
有名どころのスポンサーとなり、その人気のおこぼれ頂戴的発想は
大手企業のやることであり、

無名の新規参入者がやるべきことは
費用対効果として最も効果的で
お互いがWinWinとなるところを選ぶことです。

エクストリームスポーツとは
スノーボードやサーフィンなど、
まだまだ、知名度が低いものも多いのですが、

だからこそ、その領域のファンは熱く情熱的です。
そこでスポンサーとして入ることは、
ある意味火が付きやすく、

スポンサーとして入った、選手側からしても、
有名選手がスポンサーに対する恩恵度合いと
こうしたコアスポーツの選手が
スポンサーに抱く恩恵度合いでは全く異なりますよね。

【市場参入の事例】『量』よりも『質』を重視

更に、レッドブルは『質』をトコトン重視します。

レッドブルカー
Wikipedia レッドブル より引用

あなたもきっと上記のような車を見たことがあるでしょう。

通常の飲料マーケティングであれば
駅前でたくさんのアルバイトスタッフを雇い、
ひとつでも多く商品をばら撒くというのが一般的です。

なぜなら、このサンプリングという手法で
重要視されている指標は「配布数」だからです。

なので、人が行き交う主要駅前を使って
とにかく大量に配布するという手法が
今でもよく使われています。

しかし、レッドブルはどうでしょうか?

正直このレッドブルカーでサンプリングするのは
全くもって真逆の戦略です。

車はミニですから、積載量だけで見ても
ワゴンやトラックより圧倒的に少ない。
でも、インパクトは大ですよね?

更に、レッドブルガールの方は、
サンプリングで商品を手渡す時

「翼を授かったことはありますか?」といった
コミュニケーションを実施しています。

これは『質』を追求した考え方であり、
この『顧客体験』こそが弱者の戦略の肝でもあります。

【市場参入の事例】グーの戦略からパーの戦略へ

レッドブルは、徐々に勢いを増し。
その後セブンイレブンに採用され、CMを開始。

しかし、スーパーなどに流通網は広げず
コンビニだけの販路で戦います。

それは、値引き合戦を避けやすい
コンビニに絞ることで、
ブランドイメージを守るためです。

こうして、いよいよエナジードリンクという
市場が認知され、市場が成長期に入るやいなや、

『パーの戦略』で一気に販路を拡大、
今では、コンビニだけでなく
多くの小売店やスーパーでも手に取れるようになり、

商品バリエーションもサイズやフレーバー、
限定コラボなど多様化して
顧客ニーズを網羅しエナジードリンク市場において
第一人者として君臨しています。

あなたがもし、新規市場に参入するならば
こうした戦略発想の逆転が
大きな成果をもたらすきっかけになるでしょう。

ここまでが
ランチェスター戦略における実務体系
『市場参入戦略』でした。

次は2つ目の実務体系である
『地域戦略』です。

ランチェスター戦略【実務体系】地域戦略

地域戦略は、
細分化したエリアで重点エリアを決め
No.1地区をを1つでも多く
つくるための戦略です。

販売地域においてNo.1になること
つまり、ランチェスター戦略の結論
「No.1主義」です。

地域を細分化し、それぞれの地区の中で
No.1シェアの地区を1つずつ作っていき

最終的に販売地域全体で勝つ
=No.1になることを
地域戦略の目標としています。

地域の戦いは極度に細分化しない限り
基本は「広域戦」となります。

したがって、
2位の相手に対して√3倍以上のシェア
(且つ下限目標値26.1%以上)を
確保した状態を指します。

地域戦略の5原則

地域戦略の目標達成を
成し遂げるために考慮すべき項目が
下記の5つの内容です。

原則1.一点集中主義の原則
原則2.「足下の敵」攻撃の原則
原則3.地盤強化の原則
原則4.No.1キープの原則
原則5.固定化の原則

それぞれ見ていきましょう。

原則1.一点集中主義の原則

ランチェスター戦略の結論のひとつ
『一点集中主義』を地域戦略に
あてはめるとどうなるでしょうか?

それは、
地域を細分化した上で、
自社にとっての重点エリアを選定
その地区に対して集中攻撃をかける
ということです。

原則2.「足下の敵」攻撃の原則

これもランチェスター戦略の
結論のひとつですね。

「足下の敵」攻撃の原則を地域戦略に
使うとどうなるかと言うと、

重点エリア内の競合の中で
自社の1つ下に位置するシェアの相手を
攻撃目標として定めて徹底攻撃する
というものです。

具体的には足下の敵に該当する会社の
得意先を狙い撃ちすることです。

原則3.地盤強化の原則

自社の存在する本拠地・本店、
工場、営業拠点などの周辺地帯から
『距離』の利を活かしてNo.1を狙います。

この『距離』という概念が
非常に重要で、

弱者は特にこの『距離』を
厳密に管理することで『時間効率』を上げ
接近戦=コミュニケーションを重視した
販売活動が有効です。

この『距離』の概念は
疎かにされていることが多く
自社拠点の近くのアプローチを
徹底できていないことがあります。

地域戦略の原則として
自社地盤の強化はとても大事な要素です。

原則4.No.1キープの原則

ここで言うNo.1とは、
・選定地区の最大口顧客
・No.1得意先(2位との差が射程距離以上)
のことを指します。

地区No.1をつくる上で、
地区で最大の大口顧客を掴むことは
大きな影響を持ちます。

また、No.1得意先の数を増やす
販売活動が地区のシェアを上げるために
原則となります。

原則5.固定化の原則

戦略は「攻め」と「守り」があります。
この固定化の原則は「守り」です。

自社の取引先が、
今後も自社の顧客であってもらうために
『顧客管理』が非常に重要です。

「あなたの取引先でいたい」
そう思ってもらえる関係値を継続するために
何ができるのか?を考え
顧客をマネジメントすることが
固定化の原則となります。

地域戦略のノウハウ

ここから地域戦略の実務ノウハウについて
お話していきますが、

大事なのは「決めた地域でNo.1」に
なることです。

逆に言えば、それ以外で負けても良いし
勝てるところで勝負すれば良いのです。

競合を知れば知るほど、
商品や機能、価格の差を真に受けて
引いてしまうことがありますが、
そうしたことは勝敗の決定要因ではありません。

販売活動のほとんどで
ランチェスター第二法則が適用されますので
そうした「質」的要素よりも
「量」的要素が重要です。

なので、限定した範囲に
相手を上回る「量」を投下して、
1対1の戦いにおける「質」で勝負する
この考え方が弱者の
No.1づくりにおいて肝要です。

地域戦略=営業地域の範囲と重点を決めること

営業範囲を決めなければ、
自社の営業力が分散し、
「量」で勝る会社に
勝つことはできません。

営業担当者は、
営業の入っていない遠方に
勝機を見出すことがありますが、

アプローチ先が遠くになればなるほど
営業経費がかさみ、時間効率は悪くなります。

一時的な売上ではなく
営業範囲を限定して
そのエリアに戦力を集中することが必要です。

重点エリアの決め方とは?

強者
需要規模の大きいエリア
成長性の大きいエリア

弱者
No.1になりやすいエリア
上位との差が小さいエリア

弱者の結論は『勝ちやすい地域』です。
原則は前述の通り、自社地盤である近隣です。

弱者は、強者が狙いたい地域を避けた
地域を選ぶことが有効です。

弱者は強者の「死角・盲点」を突け!

■死角
・幹線道路・鉄道がない地域
・島・半島・盆地、ぽつんと離れた港町
・川べり、山すそ

多くの場合、都市的な需要の大きい
都市圏を狙いたくなります。

だからこそ、
上記のような、少し「田舎」や
「辺鄙(へんぴ)なエリア」は、
『死角』となり弱者にとって有効です。

都市圏は競合数も多く
強者にとって有利な「確率戦」となります。
一方、死角となるエリアであれば
競合数も減り一騎討ちできる機会が増えます。

こうした理由から「死角」は
弱者にとって有効なエリアです。

■盲点
・県、市、区などの境目
・鈍行しか止まらない地域
・河川・幹線道路・鉄道などで分断された
 都会の孤島的な地域(デルタ地帯)
・二等立地

自社の本拠地が都市圏にある場合、
死角を狙うのは難しいでしょう。

その場合も諦めることはありません。
「盲点」を突いてください。

強者の市場である都市圏の中にも
弱者の狙い目となる「盲点」が存在します。

市区町村の境目、
鈍行しか止まらない地域、
競合の営業拠点から離れたところなど
考え方は「死角」と同じです。

強者との戦いを避け、
自社の販売活動に有利な地域で
No.1づくりを行うのです。

七三構造

需要の大きい地域と盲点・死角を
俯瞰してみると全体構造が見えてきます。

地域というものは、
需要の集中する地域
死角・盲点となる地域

それぞれにに分けられ
需要規模は概ね7:3となることから
「七三構造」と呼んでいます。

強者は、
7割の需要集中地域
広域戦・確率戦・総合主義で戦い

弱者は、
3割の需要分散地域
局地戦・接近戦・一騎討ち戦で戦います。

市場構造と市場体質

今までのところで
断片的に出てきていますが、

3点攻略法の手順を説明する前に
「市場構造」と「市場体質」について
整理しておきましょう。

市場構造

市場構造とは、
地域を「点・線・面」で区分する考え方です。

「死角」や「盲点」「七三構造」と
同じように『市場をセグメント』する際に
役に立つ“物差し”だと思ってください。

市場構造
・「点」の市場
盆地・島・半島・ぽつんと離れた港町など
狭く独立性の高い狭域市場

・攻め方
弱者向きの市場
局地戦、接近戦、一騎討ち戦で戦う

・「線」の市場
鉄道沿線、街道沿い、
河川流域・旧廻船ルートなど
線状につながる線域市場

・攻め方
弱者が「面」市場を制圧する際に
攻め上がっていく攻略ルートとして使う

・「面」の市場
大都市や平野部など、近隣エリアと
重複性の高い広域市場

・攻め方
強者向きの市場
広域戦、確率戦で物量を活かして戦う

市場体質

市場体質とは、
土地の特徴である
「市場構造」とは違い

土地の住民特性、気質に
フォーカスしたセグメント思考法で
「うちもの」と「そともの」があります。

・「うちもの」の市場
昔の城下町、旧市街地、郡部農村など
人の出入りが少ない排他的地域
京都や名古屋など、
人間関係重視の土着型地域

・攻め方
弱者向きの市場
排他的で参入障壁が高いが
入ってしまえばひっくり返されにくいため
シェアが安定し集中するという特徴がある

・「そともの」の市場
宿場町や寄港地、工業地帯、
新興住宅地帯など、人の出入りが多く
開放的な地域
東京や札幌など、
他人に無関心な植民地的地域

・攻め方
強者向きの市場
交流が盛んで開放的なため
比較・検討により合理的に判断されるので
参入が容易で、ひっくり返されやすい
よってシェアが分散し
変動しやすいという特徴がある

3点攻略法でエリアを確保せよ

「3点攻略法」とは、
市場開拓の際に利用される
地域戦略の基本的な原理で、

その特徴は、
地域の最大需要地域を第4の中心点として
周りの3点を包囲し、「点・線・面」の
順番で各個撃破していく地域攻略ノウハウです。

次にその手順を公開します。

3点攻略法の手順

3点攻略法の手順は5つあります。

手順1
最終攻略地点(地区最大需要地域)を
「第四の点」として設定し、
周辺地域を細分化して
「第四の点」を包囲する
「第一、第二、第三の点」を設定する

手順2
「第一の点」(細分化された地区で
最も有利な地区)に集中攻撃をかけ
No.1若しくはシェア40%になるまで攻略する
※地域全体シェアイメージ:約5〜10%

手順3
「第二の点」も同様に
No.1若しくはシェア40%になるまで攻略する
第一と第二の点が「線」でつながり
自社地盤となる
※地域全体シェアイメージ:約20%

手順4
「第三の点」をNo.1若しくは
シェア40%になるまで攻略する
「第二と第三の点」「第三と第一の点」が
「線」でつながり「面」を形成する
※地域全体シェアイメージ:約30%

手順5
制圧した「第一、第二、第三の点」から
「第四の点」に向けて集中攻撃。
ここまでの攻略で強者へシェアアップしているので
ここからは広域戦、確率戦、総合主義(物量戦)の
強者の戦略で地域を制圧。
※地域全体シェアイメージ:約40%
=安定目標値の達成

以上が、弱者が最大需要地域である
「面」市場を制圧するための
『3点攻略法』のステップです。

【実践】地域戦略

ここまでで地域戦略のイメージが
湧いてきたのではないでしょうか?

いよいよ実践的に自社の地域戦略を策定し
実務に使える戦術に落とし込みましょう。

やるべきことは3つ

ステップ1:商圏分析
ステップ2:戦略マップ作成
ステップ3:商圏の細分化と重点エリア設定

順番に説明します。

地域戦略の実務「ステップ1:商圏分析」

まずは自社商圏の状況はどうなっているのか?
前提情報が無ければ
社内意見も中々まとまりませんね。

なので最初にやるべきことは、
商圏分析で情報を棚卸するところから
スタートします。

分析する情報は、
大きくは2つあります。

「販売情報(3C)」と
「地域情報」です。

【販売情報】
①自社情報(Company)
・事業状況、営業拠点、テリトリー
・商圏内の全顧客数
・商圏内の総需要
・保有シェア(商品別、顧客層別)

②顧客情報(Customer)
・事業状況、営業拠点、テリトリー
・顧客の顧客、顧客の競合
・業界内での位置づけ
・キーマン、人脈、評判

③競合情報(Competitor)
・事業状況、営業拠点、テリトリー
・キーマン、評判
・セールス数、セールス活動状況
・保有シェア(商品別、顧客層別)
  
【地域情報】
①人口
・男女、年齢年代、職業、未既婚別
・夜間、昼間、人出

②世帯
・構成人数、居住形態

③所得
・県民所得、課税対象所得

④産業
・商店数、小売販売額、
・工場数、工業出荷額
・事業所数

⑤その他
・地形、気候
・歴史
・県民性、商習慣、消費特性
・開発計画
・市場体質、市場構造

上記の情報を全部並べて
販売活動の状況を正確に把握しましょう。

その際に、SWOT分析
(強み・弱み・機会・脅威を洗い出す分析手法)
を使って事業方針を再確認するのも有効です。

「情報なくして戦略なし」
まずは情報収集して整理するのが
最初のステップです。

地域戦略の実務「ステップ2:戦略マップ作成」

■自社系列、他社系列で分けたMAP

■「売上規模大・中・小」×「顧客内シェアの大・中・小」で分けたMAP

■シェア別で分けたMAP
ランチェスター戦略『戦略マップ』シェア
BatchGeo:https://jp.batchgeo.com/を活用したMAP例

映画の戦略場面の一コマでも
よく出てきますが

戦略策定に「地図」の要素は
欠かせません。

自社商圏をカバーする地図を用意して
その上にシールやペンで印をつけます。

ステップ1で情報は出揃っていると
思いますので、

まずは「自社」と「競合」の
営業拠点に印をつけていきます。

次に「取引先(顧客)」
顧客売上規模の大・中・小それぞれに
顧客内シェアの大・中・小を掛け合わせて
大中小3×大中小3で、
全部で9つに分類して印をつけます。

この時に「未取引先」も
優先順位を大・中・小に分けて
印をつけます。

これで商圏の地図が
戦略マップに早変わりです。

住所の羅列では見えなかった
顧客分布で仮説が浮き上がってきます。

顧客の空白地域は
競合の強いエリアであったり、

地域的に踏切や河川で
商圏が分断されているなど

距離だけでは推し量れない
状況が浮き彫りになるのです。

自社の営業範囲は適切な広さか?
DM配布の場所は正しかったのか?
今までの戦術についても
わかることがあるでしょう。

戦略マップをつくれば
強者の営業範囲も
見えてくるかもしれませんし、

まず間違いなく言えることは
行政区域にとらわれない
地域戦略で効率的な販売活動が
できるようになるということです。

地域戦略の実務「ステップ3:商圏の細分化と重点エリア設定」

最後に商圏に優先順位をつけます。
やり方は一次商圏、二次商圏、三次商圏
という形で自社の重点エリアを決めます。

具体的なやり方は、

その①
商圏全体を3〜8つ程度に細分化します。
その際、行政区域ではなく
実際の交通導線的に区分します。
※他社は行政区域で分けるため
撹乱(陽動戦)効果があります。

その②
区切った地域ごとに
市場規模はバラバラになると思いますので
それぞれの規模が平準化されるように
区切った地域の調整を行います。

そうするとそれぞれの地域が
大体同じくらいの市場規模になるので

その中で自社にとっての
・一次商圏(重点営業範囲)、
・二次商圏(最大営業範囲)
・三次商圏(商圏外)
という形で設定していきます。

ちなみに重点エリアの決め方は
もうわかりますね?

そうです。
『勝ちやすい地域』を選ぶことが
弱者の優先事項です。

しかし、大体の目安があった方が
わかりやすいと思いますので
重点エリアの選定基準を下記にまとめます。

【補足】重点エリアの選定基準

重点エリアを選定する際は、
「地域の魅力
(規模、成長性、代表性、要衝性)」と

「自社の立ち位置(弱者or強者)」の
2つの軸で考え、そこから導き出された

・圏外弱者
・圏内弱者
・強者
・No.1
上記、4つのパターンの
どれに位置するかで
選択すると良いでしょう。

「圏外弱者」の場合
地域の魅力を度外視。
自社が強いエリアを選択する。
死角、盲点が狙い目。

自社のシェアが高く、上位差が少ない
逆転しやすいエリア、
下位との差が大きい
逆転されにくいエリアが優先。

「圏内弱者」の場合
地域の魅力度も考慮した上で
自社が強いエリアを選択。

ただし、強者や格上ライバルとは
重点エリアを差別化する。

重点エリアを一致させない
工夫が大事になる。

「強者」の場合
地域の魅力度を意識。
自社が強いエリアを選択。

「足下の敵」攻撃の原則を重視。
伸びしろの大きなエリア且つ
相手が弱いエリアを優先する。

「No.1」の場合
市場の魅力度を優先する。
伸びしろの大きなエリアで
相手が弱いエリアであれば尚良い。

以上が重点エリアを決める上で
基準となる考え方でした。

次は実際にこの地域戦略で策定した
重点エリアに対して実施する

「シェアアップ戦略」について
説明していきます。

ランチェスター戦略【実務体系】シェアアップ戦略

重点エリアが決まったら
シェア実態を把握するために
「ローラー調査」で
市場の全数調査を実施します。

その後「ランチェスター式ABC分析」で
地域だけではなく、
顧客の優先順位をつけ明確にします。

そして最後に
「シェアアップの目標と戦略づくり」が
シェアアップ戦略における
一連の流れです。

ひとつずつ見ていきましょう。

ローラー調査

ローラー調査というのは、
簡単に言うと「市場調査」のことで、

メーカー、卸、小売業など、
業績の良い企業は
業種問わず市場調査を実施しています。

しかし、ランチェスター戦略で言う
「ローラー調査」は、一般的な
サンプル調査を指す市場調査とは違って、

・ローラー調査の3つの特徴
①限定領域(対象とする地域、商品等)の全数調査
②自社の営業及び担当者が調査
③短期間で集中的に調査

上記のように通常の市場調査とは異なる
3つの特徴があります。

特徴①「限定領域(対象とする地域、商品等)の全数調査」

従来からある一定数のサンプル調査や
大口の得意先をまわるといったものではなく

細分化した「限定領域」の
大口、小口といった取引量を問わず
未取引先に至るまで「全数調査」を実施します。

なぜなら、
取引先の販売高や商品利用状況は
バラつきが多いため、いくつかのサンプルでは
実態を掴むことが難しいのです。

なので「全数」調査が大切で
この「全数」というのは、自社の取引先だけではなく
他社の得意先も含め対象領域の
エンドユーザー全数のことを指します。

これによって非常に精度の高い
情報収集が可能というわけです。

特徴②「自社の営業及び担当者が調査」

調査を外部に委託することはできますが、
外部は所詮外部です。

他社の一担当者が
あなたの会社のためにどれくらい本気で
調査してくれるでしょうか?

そのための費用と時間は適切でしょうか?

ローラー調査は、
利益に直結した販売活動に関わる
大切な調査活動です。

自社担当者が実施することで、
現場を体験する教育効果や
アイデア思考のヒントにもなる
優れたマーケティング活動となります。

そのため、ローラー調査の実施は
自社の営業担当者か自社担当者が
行うことを原則としているのが特徴です。

特徴③「短期間で集中的に調査」

当然ながらダラダラやっていては、
調査精度は落ちますし、競合に情報が
まわるかもしれません。日々の業務にも
支障をきたす恐れがあります。

なので、期間は3日程度で
「一気に調査」することが大切です。

ローラー調査の狙い

精神主義の「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」的な
やり方でうまくいく時代ではありませんよね。

大まかなシェアなどは
開示されている統計情報で入手できますが
限定された領域の情報は
手作業で調べることが最も有効です。

なので、ローラー調査で
「売れるべくして売る」という状況を
つくり出すために、

販売活動の前に「勝つ蓋然性の高い作戦」を
意図的に準備するのです。

地域戦略で策定した販売エリアの
正確な実態を把握して、
具体的な標的を定め販売活動を行なえば
売上を向上させることはそう難しくないのです。

調査の必須項目は
・顧客になり得る「全顧客数(未取引先含む)」
・顧客別の需要最大値と全体の総需要
・顧客別の仕入れシェア(メーカー別、卸別)

その他にも
・顧客情報(成長性、売上高、商品使用状況、キーパーソン)
・競合情報(販促動向、接触頻度、新商品動向)
・地域情報(商圏の成長性、新規出店状況、プロモーション)

上記を参考に調査項目を
設定してください。

【補足】市場シェアの調べ方

市場シェアというのは、

自社商品の販売数量or金額
÷
自社&競合商品の販売数量or金額
×
100

これで
「販売数量の市場シェア」

もしくは
「販売金額の市場シェア」が
算出できます。

競合の定義は
「顧客から見てどうか?」で判断し

状況によって
販売数ベースのフローシェア、
保有臭ベースのストックシェアを見ます。

調べ方はローラー調査が基本で
複数の情報源を参照することによって
精度が向上します。

一例としては、
・供給の視点
 各メーカーまたは
 卸の出荷数量や金額を分母にする

・需要の視点
 法人需要は需要の総ストック数、
 フロー数を分母にする

 消費者需要は一人あたりの
 消費支出金額を分母にする

上記があり、

概算を推計する方法として、
目に見える量的なもの、

たとえば、
売り場面積や席数、スタッフ数から
概算推計する方法があります。

ローラー調査の手順

では実際の手順について見てみましょう。
全部で7ステップです。

ステップ①
調査エリアの設定
⇒これは地域戦略で決めた重点エリアでOK

ステップ②
調査対象の設定
⇒重点エリア内の全顧客(競合顧客&未取引先含む)

ステップ③
調査項目の設定
⇒対象商品などを決めアンケート用紙をつくる

ステップ④
調査計画の設定
⇒いつ実施するのか?
日程、担当者決め内容を落とし込む

ステップ⑤
ローラー調査実施
⇒期間を3日程度に限定して集中調査

ステップ⑥
集計情報の分析、戦略策定
⇒ランチェスター式ABC分析(この後説明します)

ステップ⑦
アフターフォロー
⇒お礼によるスキンシップ形成と営業活動

ローラー調査のコツ

ローラー調査は販売活動ではありませんが
売り込み臭が出てしまうと
うまく聞き取りができないことがあります。

しかし、ちゃんと”コツ”さえ押さえれば
7,8割のアンケート回収が可能です。

私が新規営業を一社員として
実施していた時代も、

「見込み客の情報」

これこそが、営業成績を左右する
決定的要因のひとつだと感じていました。

テクニックでどうこうする以前の問題が
この「情報」ですが、少しコツがあります。

ひとつのサンプルとして
ローラー調査のトークスクリプト(簡易版)を用意しましたので
こちらを参考に自社に応用してください。
トークスクリプトをダウンロードする

買い替え需要のある商品などは
商品の利用期間の把握が重要ですし、

ランチェスター戦略を実践する上でも
競合とのシェアバランスが掴めるかどうかが
販売活動の大きな鍵になります。

ローラー調査を実践して
販売活動の効率を上げましょう。

ランチェスター式ABC分析

あなたは「ABC分析」というものを
知っていますか?

ABC分析は簡単に言うと
大口顧客から小口顧客までをざっと並べて
上からABCでグルーピングする手法です。

これはこれで良いのですが、
ランチェスター戦略では、更に踏み込んだ
シェアアップのためのABC分析を推奨しています。

ランチェスター式ABC分析とは?

ランチェスター式ABC分析では、

ローラー調査で得た情報を元に
顧客が「どれだけ需要規模が残っているのか?」
という「規模別のラージA・B・C」
3パターンと、

顧客内の需要に対して、
自社とライバル会社が占める
割合を顧客内シェアとして算出し
状況に応じて「スモールa・b・c・d」
4パターンを掛け合わせてABC分析します。

ランチェスター式ABC分析の手順

ランチェスター式ABC分析は、

「顧客の需要規模×3種」
×
「顧客内シェア×4種」の2軸で

合計12通りのパターンを使って
顧客を格付けする方法です。

「顧客の需要規模×3種」のABC選定手順

まず対象顧客を全数並べて
それぞれに占める需要規模を記入します。

そうすると全体の需要規模が出ます。
=「構成比累計」

算出した構成比累計の
・70%未満=需要の70%を占める
 大口顧客を「A」

・95%未満=需要の25%を占める
 中口顧客を「B」

・95%以上=需要の5%を占める
 小口顧客を「C」

これで需要の大きいところから
A・B・Cで振り分けることができました。

「顧客内シェア×4種」のabcd選定手順

基本的に各顧客は、あなたの提供商品以外にも
仕入れている競合商品(同じ欲求を叶える
ソリューション)があると思います。

まず自社販売商品の売上はわかると思いますので
残りの競合商品の各売上を合算すると

それぞれに割合、つまり
「会社別のシェア」が算出できますね。
このシェア状況によってabcdをつけます。

abcdの定義は以下のとおりです。

・a
自社がNo.1の顧客

・b
取引先にNo.1がいない顧客

・c
他社がNo.1の顧客

・d
自社と未取引の顧客(新規開拓候補)

※No.1の定義
単品型商品の場合=3倍差以上の1位
複数型商品の場合=√3倍差以上の1位

これで各顧客に

・需要規模のABCと
・顧客内シェアのabcd

の設定ができました。

次はこの2軸の掛け合わせで
顧客の戦略的格付けを行います。

顧客の戦略的格付け

顧客一覧に
・需要規模のABCと
・顧客内シェアのabcd

上記を記載した一例の図は
次のとおりです。

顧客の戦略的格付け
このようになります。

ここから、各顧客を12個のパターンに
分類して格付けを行います。

12の格付け分類

顧客の分類パターン

2軸で掛け合わせると
Aa〜Cdまで12個に分類されました。

上記の12のマスに、
顧客を当てはめて「重要度の優劣」を付け
顧客の格付けができあがります。

あとは、
戦闘力=営業力、つまり…

営業の「質(スキルや営業手法や商品自体)」

営業の「量(時間配分・接触回数)」を

格付けに応じた設定をすることで
科学的にシェアアッププロセスを通じた
営業活動ができるようになる
ということです。

格付け別の活動方針と量について

格付け別の活動方針と量

活動の基本方針として
・◯
 守る先(リテールサポート)

・↑(上矢印)
 攻める先

・←(左矢印)
 育てる先(リテールサポート)

・無印
 見極める先

活動の量として
・Aクラス=グリーン箇所
 (重要顧客)長時間×高頻度

・Bクラス=黄色箇所
 (維持顧客)中時間×中頻度

・Cクラス=オレンジ箇所
 (維持顧客)単時間×低頻度

・新規開拓=色なし箇所
 Bクラス同等(状況にもよる)

基本的には上記のように
活動「方針」と、活動「量」を見直します。

恐らく、
今は営業担当者が自分の判断で

・行きたいところ
・行きやすいところ

に時間配分を多く費やしているはずです。

効率的な営業活動を実施するためには
戦略的な格付けが有効となります。

【簡易版】顧客の格付け方法

顧客の総需要や競合の顧客内シェアが
「どうしても調べられない…」

そんな方に特別の
簡易版とも言える格付け方法を
お伝えします。

ステップ①
自社の売上だけで3つに分ける
大口顧客を「仮のA」
中口顧客を「仮のB」
小口顧客を「仮のC」

ステップ②
①で設定した「仮のABC」各顧客の
「伸びしろ」を推測して
「A・B・C」を付け替える

ステップ③
②で簡易版「需要ABC」が完成
ここで競合と自社の順位関係で
「abcd」を設定する

aは、自社が1番の取引先
bは、2番、3番目の取引先
cは、4番目以下の取引先
dは、未取引先

これで
簡易版「顧客内シェアabcd」が完成

ステップ④
簡易版「需要ABC」と
簡易版「顧客内シェアabcd」を
掛け合わせてAa〜Cdまでの
12パターンに分類する

ステップ⑤
格付け別の活動方針と量を定める

以上簡単5ステップです。

この格付けは、
正確であれば尚良いのですが、
そもそもできなければ
ここから進めないので

まず少し乱暴でもつくることが
非常に重要です。

ぜひお試しあれ。

シェアップ目標と戦略づくり

ここまでで情報は出揃いました。

あとはその情報を元に
自社の戦略シナリオを策定して
営業活動を実践するのみです。

まずは、シェアアップ目標をつくる上で
知っておくべき「Aa率」と「カバー率」
そして「構造シェア」について説明します。

Aa率とは?

Aa率は簡単に言うと、
顧客内シェアの深さ
=シェアの深まりを示しています。

公式は下記のとおり。

Aa率
=Aa顧客数÷需要Aグループ×100

※A、aの考え方は格付けと同じ

カバー率とは?

カバー率は簡単に言うと、
対象エリアの顧客(取引先)の範囲
=シェアの広がりを示しています。

公式は下記のとおり。

カバー率
=自社取引顧客数÷全対象顧客数×100

「Aa率」と「カバー率」はどう見て判断すれば良いか?

「Aa率」と「カバー率」は
「質(Aa率)」と「量(カバー率)」を表しています。

つまり、
弱者にとっては「Aa率」を重視すべきで
強者にとっては「カバー率」を重視すべき
このような関係になっています。

また、弱者と強者における
それぞれの目標目安となるシェア、

市場の成長段階によっての判断基準を
まとめると以下のとおりです。

Aa率(シェアの質)
・弱者
目安30%
(市場の存在感を出すために必要)

・強者
目標60%

・市場状況
特に成長期に重要な判断基準

カバー率(シェアの量)
・弱者
目標20%

・強者
目安40%
(60%を超えたらAa率重視にシフトする)

・市場状況
特に成熟期以降で重要な判断基準

このように、
市場での立場、市場の時期、によって
Aa率とカバー率の重要度が変わってくる
ということですね。

次にこのAa率とカバー率を使うことで
市場シェアとほぼ同じ意味を成す
「構造シェア」について説明します。

構造シェアを使って戦略シナリオを具体的にする

構造シェアは、
流通段階の理論上のシェアです。

算出方法は以下の公式です。

構造シェア
=(Aa率+カバー率)÷2
≒市場シェア

たとえば、
対象エリアの「Aa率が10%」
「カバー率が40%」とした場合、
構造シェアは『25%』
市場シェアも『25%』程度と想定できます。

つまり、市場シェアを常に追いかけずとも
この構造シェアを活用することで

市場シェアアップ目標と
戦略シナリオが具体的につくることが
できてしまうのです。

【実践】シェアアップ戦略

では実際のシェアアップ目標と
戦略シナリオをつくってみましょう。

ステップ①
現状の構造シェア、
Aa率、カバー率を算出する

ステップ②
市場状況、自社の立場を踏まえ
何のシェアを、どれだけ増やすのか?
複数の戦略オプションを考える

ステップ③
戦略オプションの中から
最も実現合理性の高いものを
戦略シナリオとして選択する

上記3ステップで、
シェアアップ目標と
戦略シナリオは完成です。

一例として
下記に作成にあたっての
考え方を解説します。

シェアアップ目標と戦略の策定方法

シェアアップ目標

前提として
販売対象顧客が100社
Aグループ20社 Aa数=2社
自社取引先が45社だったとすると、

現状の「Aa率は10%」「カバー率は50%」
とすると「構造シェアは30%」です。

では、目標を
実績シェア5%アップに設定した場合

・カバー率(新規開拓数)をどれだけ増やすか?
・Aa率(Aa数)をどれだけ増やすか?

という形で考えます。

すると、
シェアアップ目標「戦略オプション追記」

・戦略オプション①
⇒Aa率10%UP
⇒Aa数を2社増やす

・戦略オプション②
⇒カバー率10%UP
⇒新規開拓で取引先を10社増やす

・戦略オプション③
⇒Aa率とカバー率、それぞれ5%UP
⇒Aa数を1社増やし、且つ
新規開拓で取引先を10社増やす

上記の3つの戦略オプションが
考えられると思いますので

この中から実践する
戦略シナリオを決めるという流れです。

以上がシェアアップ戦略の実務です。

ランチェスター戦略【実務体系】営業戦略

実務体系の最後が「営業戦略」です。

営業の実務体系

・営業戦略における法則
・『質』売れない営業、売れる営業その思考の違い
・『量』営業の量的概念を科学する
・ランチェスター式営業戦略「新規開拓4回訪問の原則」
・想いがすべてを超越する

営業戦略は、販売活動を実施する
営業担当者にフォーカスした考え方で
今まで解説してきた理論の
抽出物と言えるでしょう。

まずはランチェスター法則から応用された
営業担当者の攻撃力や攻撃量について
おさらいの意味も含めて見ていき、

その後に、営業戦略のノウハウ
実際の訪問計画といった
ランチェスター戦略の営業戦略を
具体的にお話していきます。

ランチェスター法則から生まれた「営業担当者の法則」

営業戦略で用いられる
主な法則は下記の3つです。

・営業担当者 攻撃力の法則
・営業担当者 攻撃量の法則
・営業チーム 攻撃力の法則

それぞれ解説していきます。

営業担当者 攻撃力の法則

・ランチェスター第一法則
 戦闘力=武器効率×兵力数
 ↓
・営業担当者 攻撃力の法則
 攻撃力=活動の質×活動の量

ランチェスターの第一法則から
営業担当者攻撃力の法則が
導き出されました。

『質』は2つに分類され

人材の『質』には、
担当者の戦略的思考や
情報収集能力、知恵、顧客管理があり

活動の『質』には、
活動そのものの内容や活動の戦略性や
活動プロセスが該当します。

一方、活動の『量』はと言うと、
商談時間×商談件数など
主に時間的概念と接触頻度が該当します。

この法則は、
主に「質」に着目する法則です。

営業担当者 攻撃量の法則

・営業担当者 攻撃力の法則
 攻撃力=活動の質×活動の量
 ↓
・営業担当者 攻撃量の法則
 攻撃量=商談時間×商談件数

次の「営業担当者攻撃量の法則」は、
営業担当者攻撃力の法則の
「質」の概念を『滞在時間』に
「量」の概念を『訪問回数』に
置き換えた法則です。

「質」がなぜ、滞在時間になるかと言うと
質を伴った対応ができなければ
長時間の商談ができないという理由からです。

公式のとおり「攻撃量」は、
商談時間と商談件数の掛け合わせで
表すことができ、

更に細分化した

・1日あたりの攻撃量は
平均商談時間×商談件数

・1客あたりの攻撃量は
平均商談時間×商談回数

上記のようになり、
この法則は、
主に「量」に着目する法則です。

営業チーム 攻撃力の法則

今度は一営業担当者からチームになったときの
攻撃力はどのように表すのか?というのが
この「営業チーム攻撃力の法則」です。

ランチェスターの第二法則が
適用されることから

営業チーム攻撃力の法則は
攻撃力=活動の質×活動量の2乗

上記のように「活動量が2乗倍」される
というのが特徴となっていて
販売活動の組織的な相乗効果を考える上で
使う法則となっています。

では、最初の
「営業担当者攻撃力の原則」で着目する、
営業担当者の『質』について
見ていきましょう。

営業担当者の「質」は『戦略的思考』にあり

営業担当者の攻撃力を高める上で
活動の質の向上、すなわち
人材のスキルや考え方、
活動内容のレベルアップはとても重要です。

昨今は、営業担当者を呼ぶ前に
既に購入の意思決定が
ある程度完了していることも少なくなく

ただ闇雲に訪問するだけでは
大きな成果が上がらない状態になっています。

『質的要素』売れない営業担当者のマインドセット

戦略的な営業担当者を話す前に
真逆に位置するダメな営業担当者のパターンを
7つお話しましょう。

・ダメな営業担当者7タイプ
タイプ①
競争に弱く、競り合いになると
すぐ値引きする

タイプ②
競争を避けようと、機械的に、習慣的に、
同じところばかりまわっている

タイプ③
実際に訪問せずに、仮定、仮説の話が多い
※行動ではなくウンチクが多い

タイプ④
実績が上がらないことを
商品や価格のせいにして
自分のやり方について反省や向上心がない

タイプ⑤
商品に対する自信や愛情がないため
商品知識も乏しく、商品説明に迫力がない
切り返しのテクニックも持たない

タイプ⑥
昔の記憶に縛られ、何かと古い話が出る。
過去の基準で現状を見がち

タイプ⑦
情緒や感情が先に立って
客観的、論理的な考え方ができない

私自身、企業のお手伝いをすると
こうしたタイプの人によく出会います。

特に、高度成長期時代に
スキルがなくても売れて
今管理職になっているような方に
こうした人が多いというのが
ランチェスター戦略での見解です。

あなたの会社には、7つのタイプに
該当する人は居ないですか?

これからの時代に必要なのは
「質」を伴う戦略的な営業担当者です。

では、そうした「質」を兼ね備えた
戦略的な営業担当者とはどのようなことを
指すのでしょうか?

『質的要素』売れる営業担当者のマインドセット

それは、
①ゼロベース発想
②ポートフォリオ発想
③スケール・デメリット発想

上記のような思考、発想ができる人材のことを
ランチェスター戦略では質の高い
担当者であると言っています。

戦略的思考①ゼロベース発想

過去の経験による先入観や固定概念を捨てること

ゼロベース発想とは、
過去はゼロと考え、過去の延長線上で
未来をとらえない考えです。

昨今のようなゼロ成長時代においては
・年齢構成の歪みによる売れ方のばらつき
・業種間の好不調に伴う、地域経済の伸長率格差の拡大
・地域別発展スピード、産業構造変化による地域別需要の格差
・競合激化による市場状況の変動
・商圏の変化や得意先の売上高の増減
など、

とにかく市場を取り巻く変化スピードが
以前よりも早くなっているため
過去のデータはあくまで参考に
とどめることが肝要であり、

未来に過去の経験が
そのままつながるとは限らないという
ゼロベース発想が戦略的担当者に
必要な思考法なのです。

戦略的思考②ポートフォリオ発想

今、重点を置くべきものとそうでないものを区別し
ハッキリ決めることのできる決断力

「ポートフォリオ」とは
書類をとじるファイルとか、金融資産の一覧という
意味として使われますが、

ここで言うポートフォリオ発想は、
市場の成長性や商品のライフサイクル、
マーケットシェアや利益の絶対額を考えた上で

製品の追加や切り捨て、組み合わせを
戦略的に思考・発想することを指します。

ボストン・コンサルティング・グループが
70年代に提唱したPPM(プロダクト・
ポートフォリオ・マネジメント)により
有名になった概念で

事業・商品を市場の成長性と
自社の占有率で見渡し、

今の市場時期と自社の地位を把握、
各事業・商品への資源配分、取組み方針、
優先順位を定めるためのフレームワークで
発送する思考を持つ人材のことです。

戦略的思考③スケール・デメリット発想

勝つためには大小にこだわらないという考え

スケール・メリットは、
大規模による効果のことで
大量生産、大量仕入れの良さを言い表したものです。

高度成長期は、
「大きなことは良いこと」という考え方でしたが
ゼロ成長時代の今日では、
大きいことはもはやデメリットとなることも
少なくありません。

営業担当者は目先の売上目標にとらわれ
大口顧客にばかり目が行き、
小口顧客を軽視することがありますが
これは考え直した方が良いのです。

弱者が淘汰される格差社会では
小さい地域、商品、得意先であっても
ひとつでも多くの領域で勝つことが重要で

こうした一つひとつの積み重ねが
最終的な勝利へとつながります。

毎回ホームランを狙うのではなく
堅実なヒットやボールを見極め塁に出る
その〝小〟を大事にする発想が
このスケール・デメリット発想です。

次は営業担当者攻撃量の法則における
活動の『量』について考えていきます。

『量的要素』営業の量的概念を科学する

営業担当者の「量」は『時間管理」にあり!

私たちは能力に差があれど
時間には差がありません。

皆等しく時間がある中で
どのように「時間管理」するかで
パフォーマンスが変わるのです。

ここでは営業担当者の攻撃量を増大させる
時間管理について解説します。

ブラック企業への風当たりが強い昨今
限りある勤務時間の有効活用は
主に下記の4つがあります。

①交通移動時間の短縮
②ロスタイム対策
③社内業務の短縮
④スタート時期を早める

時間管理①交通移動時間の短縮

短縮するために見直すべき項目は3つです。

1つ目は、
担当エリアの広さは適切かどうかです。

担当エリアが広ければまわる移動距離が長いので
どうしても移動時間は比例して長くなります。
交通機関を考慮して担当範囲が適切かを点検してみましょう。

2つ目は、
営業拠点の立地です。

営業拠点の立地が悪ければ
それだけで移動効率は落ちます。
ただ、立地を変えるとなると
大きなコストが掛かりますので
営業担当者の出社タイミングや帰社タイミングなど
会社に戻る回数を減らすなどして効率を改善しましょう。

3つ目は、
営業担当者の立ち回り自体が悪い場合です。
担当エリアも適切、営業拠点の立地も悪くない
それでも担当者の訪問活動の立ち回りが悪ければ
時間効率は悪くなります。

新人は特に上長が、移動効率を考えた
訪問順序や訪問ルートをレクチャーして
全社的に情報を共有することで
時間効率を改善してください。

時間管理②ロスタイム対策

ロスタイム対策は
「空白のスキマ時間」をなくすことです。

たとえば、
得意先の情報を予め収集して
訪問したのに相手が会議だったとか
無駄足にならないようにするのはもちろん。

移動時間や待ち時間に
何かしらの業務がこなせるよう
あらかじめタスクや仕事を整理しておき
そのタイミングで片付けることも良い方法です。

また、テクニックとして
アポイントを「10時10分」など
端数に設定することが有効です。

なぜかというと、
1つ目は得意先の立場からすると
「10時頃に伺います」より
「10時10分に伺います」の方が
時間に対して正確で誠実な印象を与えます。

2つ目は中途半端であることが記憶に残り
対応してもらえる確度が
上がるという理由からです。

時間管理③社内業務の短縮

営業担当者の事務的な作業は
メイン業務ではないため極力減らすことが大事です。

例えば会議や打ち合わせの時間、回数は減らせないか?
資料は標準化、簡素化できないか?
支援体制はつくれないか?など
担当者個人だけではなくセクション単位で
フォローすることが改善につながります。

時間管理④スタート時期を早める

意外と盲点になりやすいのが
このスタート時期を早める方法です。

顧客との商談スタート時刻を早めれば
それだけで1日の商談回数、時間が増えます。

日本の営業スタート時間の平均は
10時10分らしいのですが、
その時間を少しでも早めることで
売上は上がるということが

営業担当者の営業スタート時刻の
平均調査からわかっています。

つまり、優秀な担当者ほど
スタート時刻が早く

ダメな担当者ほど
スタート時間が遅い

このような相関関係があると
ランチェスター戦略では述べています。

以上が、営業担当者の攻撃量全体を
増大させるための時間管理についてお話しました。

ランチェスター式営業戦略「新規開拓4回訪問の原則」

ランチェスター戦略の実務体系では
新規開拓4回訪問の原則という考え方があり、

簡単に言うと、
営業プロセスをフェーズで整理して
各フェーズ毎の目標を定め、
それぞれで何をするのかを決めることで
営業活動を標準化させるという考え方です。

また、4回というのはあくまで原則であり
絶対ではありません。

闇雲に営業するのではなく、
営業を正しく評価できる体制をつくり

見込みのあるところは営業を継続し、
見込みのないところには
無駄な営業をするのではなく

フォロー企業として
営業先とは分けて管理することが
とても大切なのです。

では、基本となる営業プロセスのフェーズとは
どのような区分になるのでしょうか?

それは下記の通りです。

準備:ターゲティング

STEP①アプローチ

STEP②ヒアリング

STEP③プレゼンテーション

STEP④クロージング

結果:受注契約 or フォロー

まずはアプローチの前にターゲティングです。

このターゲティングで考えるべき原則は、

1.顧客としての「魅力×容易度」
2.弱者は「一騎討ち戦」と「容易度重視(勝ちやすさ)」
3.強者は「確率戦」と「魅力重視(市場規模、成長性)」

ターゲティングが設定できたら、
いよいよSTEP①アプローチへ進みます。

『新規開拓4回訪問の原則』STEP①アプローチ

アプローチの目的はひとつ
『再度、話を聞きたいと思ってもらうこと』
これに尽きます。

次に会ってもらいたいと思ってもらえれば
関係値ができている状態で、STEP②のヒアリングができます。

営業においてヒアリングの精度こそが
プレゼンのレベルを左右し、
このプレゼンのレベルが
クロージングの決定率に作用するのです。

だからこそ、
『あなたにまた会いたい』そう感じてもらえるだけの
メリットを感じてもらうことが重要です。

であるならば、

訪問前に、
・相手企業をリサーチする
・相手企業のライバルをリサーチする
・紹介訪問で確認しておきたい内容をまとめる

事前に上記を準備して、

アプローチでやることは、
1.何ができる会社なのか?
2.どんな未来を提供できるのか?
3.他社とどう違うのか?

この3つであなたが相手企業にとって
価値のある企業であることを伝えましょう。

そして、相手企業が興味を示してくれたなら
次回アポイントを必ず取り付けてください。

アプローチの目標は「次回アポイント」です。

ちなみに、
この流れは「トークスクリプト」として
社内マニュアルを作成し『アプローチツール』として
磨き上げることは言うまでもありません。

より高確率で次回アポイントに
つながるアプローチツールへと改善してください。

『新規開拓4回訪問の原則』STEP②ヒアリング

あなたのアプローチがインパクトのある
興味深いものだったのであれば、
このヒアリングまでは簡単にたどりつけるでしょう。

しかし、このヒアリングこそが
大事なパートなのは前述した通りです。

ここでの目的は、
一緒に問題解決を目指せるパートナーであると
認識してもらうための信頼獲得です。

結論から言います。
このヒアリングで相手の問題意識を明確化させ
現状位置とのギャップを認識してもらうことができれば
次のプレゼン成功率は飛躍的に高まります。

ヒアリングというから、
ただ相手に質問して何を求めているのか?
聞けばいいと思っていると痛い目に会います。

売れる営業担当者の力量が発揮される
最も重要なプロセスであるヒアリングでやるべきことは
次の3つです。

1.見込み客の未来の願望を聞く
2.現状ぶち当たっている問題を聞く
3.願望と問題に対して今取り組んでいることを聞く

ポイントは、
担当者が会社を代弁して話していることとプラスで
担当者が個人的に考えていることをヒアリングすること。

そして、
相手が言葉にならなかったことを
自分で言葉として表現できるように導き
相手に現状ギャップを意識させることです。

ここまでこのブログを見て頂ける
根気強い方がどれくらいいらっしゃるかわかりませんが
この項目だけで売上は上がるほどに
非常に強力なことを記載しています。

ヒアリングで信頼関係を築き、
相手の問題意識と理想ギャップの認識、つまり
欲求を商品需要に変換できたらSTEP③プレゼンです。

『新規開拓4回訪問の原則』STEP③プレゼン

STEP②で、場が温まってきましたね。

このSTEP③では相手の感情を最高潮に高めて
選択すべきはあなたの商品であると
認識させることが目的です。

やるべきことは
売れるプレゼン『FABE』です。

売れるプレゼン『FABE』とは、

Feature:特徴
Advantage:利点
Benefit:得られる利益
Evidence:証拠

この4つの項目を網羅した
プレゼンテーションのことです。

たとえばこのブログであれば、

Feature:特徴
本家ランチェスター戦略のすべてを網羅した
ネットで入手できる最も詳しい記事

ランチェスターの理論と実務体系を
ひとつずつ網羅している非常に濃い内容

Advantage:利点
ランチェスター戦略をWEBに応用した
独自理論を持って最も成果を上げている人物が
書いたブログなので本家よりも一部、
現代仕様でわかりやすい

有料級の内容までこの記事だけで
余すことなく無料で学べる

Benefit:得られる利益

大手用の戦略に騙されることなく
自社にとって最も有効な戦略が明快になるので
成果が目に見えて上がる。

この記事さえ読み込めば
他の戦略でありがちな自社の戦略策定と
実務応用の失敗確率が減らすことができる。

ネットにアクセスすれば見れるので、
必要な箇所を24時間いつでも、手軽に、無料で、
何度でも確かめることができるので
コスパと利便性が高い。

ランチェスター戦略をマスターすれば
大概の競合ライバルに負けることはなくなるので
勝手に儲かるようになる。

Evidence:証拠

他の戦略論の多くは、学者が書いているため
学術的で現場では使いにくい。しかし、
ランチェスター戦略であれば、
理論と実務体系を備えているため
現場で使いやすい。

ランチェスター戦略は日本固有の戦略論であり
日本の商習慣・地域特性に合わせてあるため
大手、中小企業問わず、多くの企業で成果が実証済み

これをプレゼンとして話すのであれば、

Benefit(利益)で、
相手に1番響くものをひとつ提示し

Evidence(証拠)で納得させ

Feature(特徴)があるから
それらができることを強調し、

その特徴から生まれる
Benefit(利益)で
理想の未来をイメージさせ、

Advantage(利点)
という差別化ポイントで
相手の論理脳を刺激して購入を正当化させる。

この流れがひとつの例となるでしょう。

多くの場合、
プレゼンが特徴に終止して
自分の商品視点で話を進めがちなのですが
それでは相手の感情は動きません。

想像してみてください。

あなたは、あなたの『得』にしか
興味がないのです。

だから、あなたのために今この記事を
ご覧になっているはずです。

私が書いた記事でなくても、
あなたにとって有益な情報であれば
別の記事であっても何の問題もないでしょう。

見込み客もそう。

見込み客にとって何が『得』なのか?

『買う理由(必要性)』を伝えることができれば
購入してもらうことは
さほど難しいことではないのです。

『新規開拓4回訪問の原則』STEP④クロージング

プレゼンが上手くはまっていれば、
そこでテストクロージングを行っており
期限を決めるだけで、クロージングをすることなく
契約に至るというケースが多くなります。

つまりここで意思確認するだけで
クロージングが成立することが理想ですが
後ひと押しする必要があるケースもあります。

私も元々はそうでしたが、
日本人の多くは奥手で
クロージングが下手くそな人が多いです。

でも、そんな人でも契約を取りこぼすことなく
高い受注率を叩き出すクロージング法を
お話したいと思います。

クロージングの手法は数十種類あるのですが、
ここでは簡単にできる方法を1つお伝えします。

リンゴとミカンの比較

コピーライティングを学んだ人なら
基礎的な内容になりますが、
これはシンプルなのにパワフルな方法です。

正直これはほとんどの営業クロージングに使えます。
即効性の高い手法なのでぜひ使ってください。

では早速、これはどう使うかと言うと、

たとえば、
あるサプリを売るとします。

その時に、
あなたはどういった未来を見込み客が得られるのか?
そのBenefit(利益)を話しているはずですね。

なので見込み客は、
Benefit(利益)を手に入れるために
提示された金額を支払うことに対して
『損しないか?』を考えています。

そこで『リンゴとミカンの比較』です。

見込み客へ『同じ未来=Benefit』を
手に入れられる商品を提示し、
それぞれの価格、それぞれとの優位性を
語ってあげるのです。

こんな感じで

===========

このサプリと同じことを叶えられる商品が
実はあることを告白します。

それは、このA薬品です。

しかしこの薬品は3万円です。
また、医薬品ですので◯◯という副作用があります。

そして、もうひとつB美容整形があります。

美容整形なら、あなたの望む形を
すぐに手に入れることができると思います。

しかし、

これも必ずその要望通りになるかは
絶対とは言い切れません。
失敗した時のリスクは計り知れないのは
ご想像に難しくないですよね。

また価格は20万円と非常に高額です。

しかし、当社のこのサプリであれば、
AやBよりも少し時間は掛かるものの、

A薬品のような副作用はありません。
B美容整形のようなリスクもありません。

更に価格は

20万円でもなく、

3万円でもなく、

たった3千円です。
1日あたりたったの100円という価格です。

いかがでしょうか?

缶コーヒー以下の価格で
あなたの理想の未来を
このサプリで手に入れませんか?

==============

このような感じです。

結構端折っていますが
何となくイメージできたのではないでしょうか。

多くの場合は、
価格を安く感じさせることで
購入の敷居を下げることに使います。

たとえば、車を購入する際に
カーナビのオプションは安く感じますが

新たにカーナビを購入する時は
車とセットで買うときよりも遥かに
価格について敏感になります。

前提となる価格と
その後に出される料金の差があればあるほど
人はお得感を感じやすくなる。
その効果を逆手にとった方法というわけです。

まとめると、
この『リンゴとミカンの比較』は、

・価格的な比較
・量的な比較
・結果(メリットorリスク)の比較

などを利用して、

自社商品がうたう未来と近しい内容が
得られる商品を引き合いに出し、

見込み客の比較対象をサポートし、
提供する商品は、見込み客が決断すべき商品で
間違いないということを決心してもらうための
クロージング手法です。

簡単に使えるクロージング手法ですので
ぜひ取り入れてみてくださいね。

想いがすべてを超越する

いよいよ営業戦略の最後のパートです。

ランチェスター戦略は、
最強の差別化としてひとつの概念を
提唱しています。

それはあなたの『想い』です。

どんな技術、機能、材質、価格、etc…
たとえ、商標、特許、意匠、著作権、をとっても
やろうと思えば同じような模倣はできると言われています。

そもそも、中小零細がやって市場規模が
見込まれるものは、大手が黙っていません。

後発参入で市場参入者が飲み込まれることは
よくあることであり、本当の意味でユニークなのは
『あなた』自身に他なりません。

あなたがどんな想いで
ビジネスを行っているのか?

なぜその事業を進めるのか?

あなたの想いは全社に浸透していますか?

ランチェスター戦略は
戦争の勝ち負けのルールから生まれたと述べました。

戦略、戦術、スタッフ、キャンペーン、セールス
これらはすべて『戦争』で使われていた単語です。

そして、

戦争において人々の心を掌握し
突き動かすことができるのはただひとつ

『大義名分』です。

あなたの武器や兵士が優秀でも
大義名分なき戦争は統率が取れず敗北します。

ではもう一度お聞きします。

あなたのビジネス。
あなたの事業。

そこに『大義名分』はあるでしょうか?

最後の差別化は、
あなたが事業にかけるその『想い』です。

その『想い』が相手の心を動かし
他の誰でもないあなたの商品購入へと
関心を向けるのです。

・給料だけのために働く営業担当者
・仕事に想いを持って働く営業担当者

果たしてどちらが活躍するでしょうか?
あなたはどちらから買いたいと思うでしょうか?

最強の差別化である『想い』をつくり
あなたの営業組織をたくましく、そして

追っては、
あなたのビジネスを通して

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